カチガワ録音雑記

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さて、
[Mother Ship](69)を最後にBlueNoteを離れたLarry Youngは、その後三年間、リーダー作を作っていません。その間、Tony Williams Lifetimeのメンバーとしての活動を続けながら、Jimi Hendrixとのセッション、Miles Davis[Bitches Brew]への参加、Carlos SantanaとJohn McLaughlinの[Love Devotion Surrender]に参加するなど、JazzとRockの間を行き交う活動をしていました。
その中でも一番エグイと言えるのが、[Love Cry Want](72)
メンバーは、Nicholas(g, synth)/ Joe Gallivan(d, per, g, synth)/ Jimmy Molneiri(d, per)
Nicholasという人物がリーダーのようです。全然知らない人達ですね。内容はフリー・インプロヴィゼーション。電子音やパーカションが交錯する中をラリー・ヤングが暴れまくってます。ライフタイムの1stも相当なもんですが、あくまでJAZZとHARDROCKの間に位置するようなスタイルを維持してました。無軌道さにおいては、こちらが遥かに上回っています。ノイズ・ミュージックと言っても過言ではなく、ラリー・ヤングの作品中、最もむちゃくちゃなシロモノだと思います。で、オクラ入り(笑)。97年にようやくリリース。
73年、久々にリーダー作をレコーディング。それが[Lawrence of Newark]。
メンバーが、Abdul Shahid(d)/ Jumma Santos(conga, per)/ Howard T. King(d)/ James Flores(d)/ Stacey Edwards(conga)/ Don Pate(b)/ James Ulmer(g)/ Umar Abdul Muizz(conga)/ Armen Halburian(conga, per)/ Diedre Johnson(cello)/ Juni Booth(b)/ Art Gore(d, elp)/ Addul Hakim (bongo)/ Poppy La Boy(per)/ Cedric Lawson(elp)/ Pharoah Sanders(ts, vo)/ Dennis Mourouse(ts, els)/ Charles Magee(etp)とかなり膨大。
全員が全曲参加しているのか、曲毎に参加メンバーを入れ替えているのかは不明。とにかく打楽器奏者が目立ちますね。ここまで多いと、アフリカの打楽器アンサンブルのような熱狂的な内容を想像しますが*1、それとは違って牧歌的だったりスペイシーだったりと、ゆるやかなサイケデリックを形成しています。「ジャズでやたら打楽器が多くスペイシー」と言えばSun Raを思い出しますが、彼らほど統制が執れていないところが逆に特徴になっているようです。中でも[Sunshine Fly Away]という曲を聴くと、ジャケのせいもあって砂漠の民がラクダに乗って移動している様を思い浮かべます。リリースしてすぐレーベルが潰れちゃったので、当時はほとんど出回らなかったようです。今は再発されてCD、LPとも手に入ります。
その後、Larry Young's Fuelを結成。75年に[Larry Young's Fuel]、76年に[Spaceball]をリリースします。かなりソウル寄りなクロスオーバー/フュージョンでウケが良さそうなんですが、なんと二枚ともオクラ入り(再発されてます) 今じゃレアグルーヴものの定番で、Larry Youngと言えばこちらを連想する人の方が多そう。
77年にJoe Chambersとのデュオ作[Double Exposure]を録音。チェンバースはドラマーですが、ここでは主にピアノを弾いています。しっとりとした美しいアルバムです。ロングトーンを多用したオルガンのバッキングが美しさを際立たせてます。こちらはリリースされたようですが、あまりみかけませんね。見かけたら買いですよ。マジでオススメです。同年、Fuel名義で[The Magician]というアルバムを作っているみたいなんですが、オフィシャルサイト以外にそんな情報は載ってないんですよね。謎のアルバムです。そして78年、原因不明の急病で亡くなります。享年37歳。なんだか69年以降の彼は不遇もいいとこですね。常に自分の感覚を更新し続ける演奏能力と作曲センスを持ちながらオルガンという保守的な楽器を用いたからこそ、同時代に並ぶ者がいないほどユニークな存在になったんですけど、逆にそれが仇にもなったという事でしょうか。普通に考えれば、他にいないんだったら重宝されそうな気がするんですが・・・。オルガンそのものがファンキー/ソウルジャズ、またはプログレ以外に求められていなかったのかもしれないですね。*2
リーダー作以外も含むディスコグラフィーバイオグラフィーがコチラに載ってます。
http://www.larryyoungmusic.com/index2.html

*1:そもそもコンガはアフリカの楽器ではない

*2:とはいえFuel時代は主にキーボードを弾いているので、この推測は当て嵌まらないんですが。