カチガワ録音雑記

地域の皆様に愛されて100年。カチ録は街の情報発信基地。

映画(随時更新)

『127時間』
佳作。右腕切断のシーンは本当にキツかった。「フィッシュなんか聴いてるやつはモテない」は名言。


トランスフォーマー/ダークサイド・オブ・ザ・ムーン』
2回目。1回目はIMAX3Dで観た。変形が観たいがためにもう一度鑑賞。このシリーズは脚本がテキトーだが、中でも今作は一番酷い。そのせいで肝心のアクションまでが精彩を欠く始末。リベンジが一番面白いかな。ただラスト、オプティマス・プライムの鬼畜ぶりは爆笑必至。


『ピラニア2/殺人魚フライングキラー』
ジェームズ・キャメロン黒歴史。とても後のヒットメーカーが作ったとは思えない内容。
脚本・演出・カメラ、全てにおいて期待通りのショボさ。ギャグも滑ってる。別の監督が作った前作の方がまだ笑える分マシ。子供の頃テレビで観た時はもうちょっと楽しめた気がする。


ビッグ・リボウスキ
2回目。感動的なまでのボンクラ。あまりにもボンクラ。ボンクラのイマジネーションはやっぱりボンクラ。鋭いとこ突いててもボンクラだから結局空回り。
イイ顔、イイキャラ、イイ台詞。コーエン兄弟のボンクラ愛は本物。できることなら一服しつつ観たい映画。最高


インモータルズ / 神々の戦い』
タイタンの戦い』よりかは良かった。こういうのは『300』が一番楽しいかな。
アテナ役の人がやたらエロい雰囲気なので誰かと思ったら、『トランスフォーマー / リベンジ』で主人公を誘惑する役の人だった。


『カウボーイ & エイリアン』
登場人物の成長や相互理解といった人間ドラマ部は手堅くまとめてある。エイリアンの描写がけっこういい加減。どう見てもただの脳筋クリーチャーで、あれが高い知性を持つようには思えない。クライマックスも決して悪くはないんだけど、いまひとつノリきれない感じだった。ただ、オープニング〜宇宙人との邂逅までの一連の流れはとても良かったと思うし、○○復活のシーンは爆笑させてもらった。アクションに関しては、銃撃よりも肉弾戦の方が巧いと思えた。


『アナザー・プラネット』
ラスト近くまでは、「良くある贖罪の話か。佳作だな」と思ってたら、ラストでやられた。この映画の結末について、主人公は赦しを得、あの男は希望を得られたと解釈してる人も多いようだけど、完全に違うでしょ。確かにラストシーンまではその流れだった。けどあのラストシーン、あれは主人公の希望(悪く言えば都合の良い解釈)を完全に否定するものでしょう。結局、主人公は赦しを得られず、男は絶望したままなんだよ。あの二人が再び前を向いて歩き出せるかどうかは、“もう一人の自分”との出会い、そして対話にかかっている。つまり映画が終わったあの瞬間から、二人の本当の物語が始まる。傑作です


『96時間』
とにかくテンポ良く、一切寄り道しない。アクションはこうでなきゃと思わせる映画。イントロダクションから本筋への導入も話が早くて巧い。あの演出は鳥肌がたった。最悪なのはこの安易すぎる邦題。何番煎じだよ。この邦題のせいでかなり損をしてる映画だと思う。


カールじいさんの空飛ぶ家
2回目。オープニング、クライマックスへの導入、そしてエンディングなど、至る所で号泣してしまう。本当に良く練られた脚本・演出に脱帽。ピクサーは基本どれもハイクオリティだけど、特に00年代の作品は物凄い。


スキャナー・ダークリー
物語の前半は愉快なボンクラ・ストーリーが楽しく展開されててかなり笑わせてもらった。動くもの(人の顔など)の輪郭が常にうにょうにょ動いてたり、外見がモーフィングのように常に変化し続けるスーツがあったりと全体的にヌルヌルとした感触で、酩酊状態のような気分を味わえる映像も良い。ところが後半に進むにつれ雰囲気が変わり、エンドロールで一気に落としにかかる。そこで映画の導入部を思い出し、これはバッドトリップの映画なんだという事に気付く。文字通りの緩やかな死。その死が生命の源であるはずの大地から生えている皮肉。秩序の為に犠牲にされる人々。ブラックユーモア溢れる傑作。


天国の日々
ストーリーはオーソドックスな悲恋もの。評判通りの美しい映像が堪能できた。ただ、もっと若いうちに観ておけば良かったと痛感した。というのも本作の監督であるテレンス・マリックの最新作『ツリー・オブ・ライフ』を観た後ではどうしても霞んでしまうからだ。これは『シン・レッド・ライン』を観た時も同様に感じた事だ。初めて観たテレンス・マリック作品が『ツリー・オブ・ライフ』だったというのはある意味で不幸だったかも。おそらくもう、彼の過去作では満足できないと思う。それほどまでに『ツリー〜』は素晴らしい映画だった。圧倒的だった。


アメイジングスパイダーマン』(109シネマズ名古屋)
IMAX3Dにて鑑賞。内容はベタな青春ドラマで実に薄っぺらい。が、そんな事はわかってたからどうでも良い。3Dでスパイダーマンが街中を飛び回る姿やアクションシーンが実に爽快で、それだけで充分満足。その上ヒロインがエマ・ストーンだから、もう最高だった。エンディングのクソダサイ邦ロックを除けば・・・。せっかく(エマ・ストーンの)余韻に浸ろうと思ってたのに台無しだよ!3D映画はアトラクションと割り切って観ればかなり楽しめる。そして、それがIMAXなら必ずIMAXシアターで観る事。IMAX映画はIMAXシアターで上映される事を前提として作られているので、とてもじゃないが一般のシアターではその魅力をフルに生かしきれない。それくらいスペックの差がある。


メリダとおそろしの森』(ミッドランドシネマ名古屋空港
ピクサーならではの映像・美術の丁寧さはさすが。けど肝心の脚本が普通。この映画にはピクサーならではの深みや旨味が少なく、筋をなぞっただけの淡白なものに感じられた。主役の声ですが、冒頭のモノローグは相当酷いが、あとは特に違和感なし。物語が大した事ないせいだと思う。この企画を持ち込んだ監督がピクサーと揉めて降板してるので、そのゴタゴタで脚本を練る時間がなかったんだと思いたい。本来のピクサーの脚本はあんなもんじゃない。同時上映の短編『にせものバズ』は質感のクオリティが異常。完全に実写のトイが動いているようにしか見えない。『月と少年』は茶目っ気と夢のある発想、ヒネリの効いた演出が光る。これぞピクサー


おおかみこどもの雨と雪』(ミッドランドシネマ名古屋空港
サマーウォーズ』をあまり評価していないし、今作についても期待してなかった。で、観終わった後、ただただ放心状態。とにかく物凄いものを観た感動で、幕が上がっても立ち上がれなかった。勘違いして欲しくないのが、これは理想の母親像を描いた作品ではないという事。もちろん、母親がメインである事は確かだけれど。そこを見誤ると、感想が単なる子育て論議になってしまう。なぜ、時系列で丁寧に描いたのか(アフレコまでも順撮りという拘りよう)。子が生まれ、父親がいなくなるまでのシーンにどんな意味が込められているのか。ここをきちんと理解していれば、物語の本質を見誤る事はないはず。そして、クライマックスで大きな感動を味わえるはず。
ところでこんな凄い映画を作る事ができたのは間違いなく『サマーウォーズ』が大ヒットしたお陰。ある人が常々「志の高いアニメは多少のアラがあってもサポートしたい」と言っていた意味がわかった。みんな全盛期のジブリに慣れちゃってるけど、あんな風に作るにはとにかくヒットを飛ばして時間もお金も確保できる状態にならないとムリだからね。細田監督はそれをやり遂げ、そしてこんな素晴らしい映画を作った。


『ピラニア・リターンズ』(イオンシネマ・ワンダー店)
『ピラニア3DD』の続編。トマトメーターで10%台という数値を叩き出した本作。全く、少しも期待せずに観たんだけど、これが最高だった。前作からアクションをごっそり省き、グロ度も少々後退したものの、エロと悪ふざけを極限まで推し進め、全てをそこにつぎ込んだ思い切りの良さ。「映画としての体裁を最低限保ってればいい」とばかりに不要な部分をばっさり切り落としてあるので異常にテンポが良い。その上カメラワーク含め映像技術も高いので安っぽい仕上がりになってない。もう最高!!爆笑度は完全に前作超え!お通夜みたいな雰囲気の館内に友人含む3人の爆笑が始終響き渡った。こんなもん静かに観てどうするんだよ!ジェームズ・キャメロンが前作に対して、「こういう低俗な映画が3D映画をダメにする。3Dとしての目新しさがまったくないし、まるで70〜80年代に量産されたひどいホラー映画を思い出した」って言ってたけど、今作観たら卒倒するだろうね。ところで“70〜80年代に量産されたひどいホラー映画”って『殺人魚フライングキラー』の事ですねわかります。
とりあえずキャメロンに言っとく。
3Dはこういう低俗な映画の為にあるんだよ!!なに、アバター?あれだって映像だけで中身カラッポじゃねぇか!!!



ゴモラ
ナポリのギャング、カモッラを描いた映画。カモッラを最初に知ったのは浦沢直樹マスターキートン』だが、最早その頃の古いギャング然とした佇まいは微塵もない。団地を中心として活動し、低年齢化する現代のギャングとしての姿があった。団地が1つの強固な共同体として存在している様子は『憎しみ』でも描かれていたし、その地域で生きるものは望むと望まざるに関わらずギャングと何かしら関わって生きていくしかないという点では『シティ・オブ・ゴッド』や『シティ・オブ・メン』『闇の列車、光の旅』とも共通している。ドラマ的な演出が少なくドキュメントに近い作りなので、映画としてというよりカモッラを取り巻くカルチャーや闇を描いたものとして興味深く観させてもらった。MS-13加入のための通過儀礼がリンチなのに対し、カモッラは防弾チョッキ越しに銃で撃たれるという点や、構成員はどう考えても地元の不良と大差ない行動半径や視野の狭さにも関わらず、動かす金や麻薬が莫大な為に世の中に与えている影響が世界規模という点など、中米ギャングとの共通点も多く見られた。中米やナポリだけに関わらずこれが現代ギャングの姿なんだろう。


ダークナイト・ライジング』(109シネマズ名古屋)
IMAXにて鑑賞。作風は前作よりもむしろビギンズに近く、脚本はバカ映画のそれ。キャラクター、ガジェット、シチュエーションにもおいしい素材が揃ってる。にもかかわらず、それらが全て台無しになっていた。アクションシーンは最初から諦めていたが、物語としてもカタルシスの得られるシーンはない。見せ場と思われるシーンも物凄く地味。キャットウーマンの撮り方も全然ダメ。アン・ハサウェイはこの役の為に激しいトレーニングを積み、完璧なボディラインを作り上げてノリノリでキャットウーマンを演じているのにその魅力を生かせていない。せっかく気前よく尻を突き出してくれてるんだからもうちょっと撮り方あるだろうに。ベインにしてもかなり魅力あるキャラクターなんだがどうにも・・・もったいない。そう、この映画は「もったいない」。バカアクション映画としてかなりおいしい素材がノーランのクソ真面目さで台無しになっている(良かったのは冒頭の空撮くらい。あれは凄かった)。全く同じ素材でザック・スナイダーあたりに撮り直して欲しい。この3部作、終わってみれば『ビギンズ』がダメだったんじゃなくてむしろ『ダークナイト』が異質だったんだな。ああいう陰気な作風の方がノーランには合ってる。


『哀しき獣』
↑と同じ日に鑑賞。最高。『ダークナイト・ライジング』で感じたストレスを見事に解消してくれた。そうなんだよ、脚本がおバカならこうするべきなんだよな。手斧や包丁が飛び交い、血飛沫が飛び散るアクションは痛快の一言。特にミョン社長の無双っぷりは凄まじすぎて爆笑!脚本はこんがらがって全然整理し切れてないけど、それはまぁ各自で脳内補完すれば良いよ。


『タンタンの冒険〜ユニコーン号の秘密』
2回目。1回目はIMAX3D字幕版で観た。今回はBD吹替え。とにかく洋上での戦いとハヤブサを追いかけるシーンの爽快感は異常!これは2Dで観ても凄かった(IMAX3Dだともっと凄い)。映像の質感のリアルさも凄い事になってる。水の表現やうなじの生え際に鳥肌。ストーリーとしては他愛ないが痛快な冒険ものとしてはこれで充分と思う。グーニーズで育った身としては是非ガキんちょに観て欲しい映画。


ドラゴン・タトゥーの女
キャラクターや人間関係を把握するのが大変だったけど、だいたい予想通りの展開でミステリーとしては凡庸。まぁそれ良いとして、一番気になったのはフィンチャー作品特有のゾクゾクするような映像感覚が希薄だった事。あのシーンでのエンヤとか完全にギャグ。まぁ3部作の始まりなので、総合的な評価は全て見終えた後だな。


バットマン』(ティム・バートン版)
ダークナイト・ライジング』があんなだったので、こちらも確認したくなった。ノーラン版に比べるとかなり軽いノリで、単純なヒーローものとして楽しめた。バットマンなのに普通に人殺しまくってるしね(笑。久々に観て感じたのは、『ダークナイト』ではそこここで本作に対するオマージュが捧げられてるって事。かなり似たシーン、展開がある。ジョーカーについてはジャック・ニコルソンの方がより原作コミックに近いように思えた。


バットマン・リターンズ
ダニー・デビートミシェル・ファイファークリストファー・ウォーケンと悪役が魅力的過ぎ!!特にダニー・デビート扮するペンギンのキレっぷりは最高!!バットマンむちゃくちゃ影が薄い(笑。キャットウーマンについてはノーラン版よりこちらの方が断然魅力的なキャラとして描けてる。1作目よりテンポが良いし、バートン色が濃くて楽しいです。ペンギンの結末については、今だったらたぶん違う展開になるだろうね。ノーランさん、ライジングをあんなアホ映画にするならペンギンを現実的なキャラクターとして描いても良かったんじゃない?


『トータルリコール』(ミッドランドシネマ名古屋空港
リメイク。トマトメーターが30%台と低めなので期待値低めで観た。そのおかげかそれほど悪くはなかった。アクションにしろ映像にしろ平均的な水準は満たしてる。新鮮味はないが、手堅くまとめてある。それにテンポも良い。あと、街の作りがもろブレードランナーをアップデートさせた感じで、この監督はトータルリコールよりそっちがやりたかったんじゃないかと思った。主役がリコール社へ行く時に凶悪なDUBSTEPがかかってて、それがめちゃくちゃかっこ良かった。あと「フォール」という乗り物の設定がぶっ飛んでて良かったが、そこを舞台にしたクライマックスはそれほど緊張感なし。オリジナル版にたいするオマージュがいくつかちりばめられていたと思う。


インクレディブル・ハルク』『キャプテン・アメリカ - ザ・ファースト・アベンジャー』
アベンジャーズ』前に観ておこうと思い立ったので。良くも悪くも中身のないポップコーンムービーなので、特にどこがどうだったかという感想が浮かばない。『キャプテン・アメリカ』の中盤の展開に「『地獄のバスターズ』かよ笑」と思ったくらいかな。『アイアンマン』シリーズや『マイティ・ソー』を観た時も感じた事だが、完全に『アベンジャーズ』の為に作られた感が強い。各作品を絶妙に絡ませて『アベンジャーズ』への期待を煽るやり方は巧いと思った。個々の作品では『アイアンマン』が一番好きかな。


アベンジャーズ』(109シネマズ名古屋)8/17 (ミッドランドシネマ名古屋空港)9/1
IMAX3Dにて鑑賞。こういうオールスターものって「活躍するのはせいぜい1,2名で、それ以外はほぼ脇役扱い。仲間集めに時間の大半を割き、漸く揃ったところでボス倒して終了」ってのがセオリー。それが今作では仲間集めはさっさと終えて、それぞれのキャラに見せ場を持たせつつ気の利いた笑いと単純明快な話運びでもってスカッと楽しい映画に仕上げていた。絶対大した役じゃないだろうと思っていたホークアイや、いかにも絡ませ辛そうなハルクにしろ巧くメインストーリーに組み込んであって感心した。まぁ結局アイアンマンが全部持ってくんだけどね(笑。ロバート・ダウニーJrはいつもながら冴えてて随所で楽しませてくれるんだけど、その他の部分の笑いも冴えてた。特にロキについては真面目なキャラなのにほぼ道化と化してて、彼のパートの大半で劇場が笑いに包まれてた。例のオマケも最高。アオリについて随分と過敏に反応している方がいるようだけど、ポップコーン・ムービーとして最高の仕上がりなのであながち誇大広告でもないと思うな。これまでのシリーズを観てなくても、軽くネットで予習しておけば楽しめると思う。一連のシリーズで煽りに煽っといてスカだったら目もあてられないなと心配してたんだけど、期待以上の出来でした。


『プロメテウス』(109シネマズ川崎)8/25 (109シネマズ名古屋)9/2
IMAX3Dにて鑑賞。壮大且つ美しいオープニングからしてハッタリが充分効いているし、そこからの丁寧すぎる描き方に感心しつつも結局気になるのは「で、誰が最初に死ぬの?」という事。監督はそこを充分わかっていたようで、「はいはいマッチマッチ、もういいでしょ?」とばかりに人類の起源とやらにカタを付け、あとは一気にB級SFホラー道をひた走る。高度な技術とセンスで以て御歳74とはとても思えない気の効いたホラー描写を惜しげもなく披露する監督。ところが重いテーマを期待してエイリアン考察に浸りたい方々にはえらく不評のよう。はっきり言わせてもらう。監督の「映画って娯楽だろ?」というメッセージとそのサービス精神を受け止めないのはあまりにもったいないし、ましてや知った風なイチャモンつけるなんて不粋だよ。ご都合主義?それがどうした。だいたい、人類が宇宙からの何かによって生まれたなんて設定自体、悪ふざけ以外の何物でもないだろ笑。エイリアンのセルフオマージュもたっぷりあるので1作目を観てからの鑑賞を強くオススメします。既に続編の製作も決まっており、主演のノオミ・ラパスマイケル・ファスベンダー(最高!)の続投も決定。監督にはこのシリーズを撮り終えるまで絶対に死なないでもらいたい!笑


宇宙人ポール
サイモン・ペグ、ニック・フロスト、そしてセス・ローゲンときたら面白くないわけがない。膨大なパロディと気の利いたセリフ、展開でとにかく楽しませてくれる映画。ポールがあまりにもナイスガイで、エンディングでの彼との別れが本気で寂しかった笑。最高!


『サベイランス』
ジェニファー・リンチ監督作。父親のようなドープさはないが、妙な居心地の悪さが通奏低音のように漂い続ける映画だった。結末が残酷だとか異常だとかで賛否両論らしいが、それほどでもないように思う。


ディクテーター 身元不明でニューヨーク』(イオンシネマワンダー店)9/13
ほぼ全編、強烈なブラックジョークで構成されていて、腹がよじれるほど笑わせてもらった。独裁者が主役というのを良い事にやりたい放題。テンポも良く、退屈するシーンが唯の1つもなかった。独裁国家はもちろん、グローバル資本主義アメリカ帝国主義、果てはマイノリティー支援のオーガニックショップに至るまで笑い飛ばす。演説シーンは明らかにチャップリン『独裁者』のオマージュ。チャップリンは演説のシーンで一切の笑いを排除し満身の怒りをぶつけたが、サシャ・バロン・コーエンはあくまでブラックジョークを貫きつつ強烈にアメリカ帝国主義を皮肉り、99%運動へのシンパシーを寄せた。この映画はチャップリン版『独裁者』の現代版でしょう。


『エリート・スクワッド』
リオ・デ・ジャネイロの軍警察、中でもBOPEと呼ばれる特殊部隊を中心にした映画。BOPEは警察の中でも独立した存在で、完全に対ギャング暴力装置。一方で警察は腐敗していて、ギャングから金をせしめ、商店からミカジメ料を巻き上げる。幹部同士で縄張り争いし、ボス(司令官)に取り入ったものがのし上り、裏切りを働いた奴は殺される。もう完全にヤクザ。その中でガチガチの組織であるBOPEに志願するのはほとんど警察での立場が危うくなったやつばかり。そんなやつらを入隊させても腐敗の素だから、徹底的にしごく。「おまえらは誰一人歓迎されてない!」心と体が粉々になるまで罵られ、しごかれる。脱落者が出ると教官が歓声を上げる。そうして志願者100人中4人に絞るんだから凄まじい。警察以外にも、ギャングと大学生との関係性なんかも描かれてるのが面白い。スラムでの教育支援のNPOをやるにもギャングの庇護が必要で、その条件としてそこで働いてる学生がディーラーになり、大学で大麻を売りさばく。あの街で大学に行ける人間はほとんど金持ちのボンボンばかりだから当然大麻大好き(笑。飛ぶように売れて、それがギャングの資金源になってる。警察は犯罪を見過ごし、金持ちは資金を提供し、スラムの住民は人材を提供する。そんなギャングを中心として成り立つ街で、真っ向から敵対する組織がBOPE。ただ、彼らは完全に暴力装置と化してるので、弱者の味方というわけでは決してない。『ゴモラ』よりは映画っぽい作りで、ドキュメントと見紛う生々しさの中に劇映画としての面白さも盛り込んであって最高です。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ダニエル・デイ・ルイスを15年ぶりに観たけど、こんな凄い役者だったんだね。ジョニー・グリーンウッド(radiohead)による不穏としか言いようのない音楽も秀逸。映像も美しい。ほとんどのセリフのない冒頭約15分間でグッと引き込まれ、後の2時間15分はあっという間だった。強烈な映画。


『ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド』(シネマスコーレ)11/1
キューバゾンビ映画。NYサルサに対するキューバン・サルサのような緩やかなノリはゾンビ映画においてもそうだった。強い日差しの中、呑気に展開される終末と殺戮。ちょっとL4D2意識してるかも。楽しかったです。


『ピンチ・シッター』
ジャド・アパトー映画で有名なジョナ・ヒル主演。テキトーな作りだがギャグは冴えてるのでかなり楽しめる。良識ある親御さん達には「子供に見せたくない映画」として圧倒的な不支持を得られるであろうが、ローティーン向けに気の利いたイイ事も言ってるのでむしろ小中学生は観た方が良い。