カチガワ録音雑記

地域の皆様に愛されて100年。カチ録は街の情報発信基地。


Escalator Over The Hill
詩人Paul Hainesによる戯曲を基に、Carla Bleyが作・編曲した3枚組LP。
参加メンバーは、膨大なのでこちらを参照してください。
JCOAの名の下、気鋭のフリーインプロヴィゼーション/フリージャズ/ジャズロックのミュージシャンが一同に会し、68年〜71年と実に三年もの年月をかけて作られたモノスゴイ作品。歌詞や配役が記された分厚いインナーには製作当時の写真が数多くちりばめられていて、それを観ながら聴いていたら胸が熱くなった。最早完全に音楽産業のメインストリームから外れているものの、「自分たちこそが、商業音楽とは別の流れの、最先端の音楽を作り出しているのだ」という気概、情熱がひしひしと伝わってきた。
この頃は、黒人主導のフリージャズがコルトレーンの死を境に急激に失速、アフロ/スピリチュアル→フュージョンへと移行しつつあり、その一方でフリージャズは白人主導のフリーインプロヴィゼーションとして前衛化・先鋭化、その舞台は欧州へと移りつつあった時期。そんな中、アメリカで結成されたのがこのJazz Composer's Orchestra Association(JCOA)。これは64年の「ジャズの10月革命」と呼ばれるフリージャズの一大イベントをきっかけに、Carla BleyとMichael Mantlerが発起人となって作られた組織で、金は無いが才気に溢れたミュージシャン達が大編成向けの作・編曲および演奏ができるよう協力し合おうという名目で立ち上げたもの。75年まで存続し、7作品残してます。後の作品に行くほど発起人二人との関わりが薄くなっていっているみたいなんで、そのへんの出来はどうなのかわかりませんが、1作目、本作、4作目、そしてJCOAとほぼ同じメンツで作られたCharlie Haden[Liberation Music Orchestra](69)は確実に素晴らしい出来です。ちなみに[Liberation...]もCarla Bleyが編曲してます。

写真はJCOA1作目のインナーから。この頃は才女って雰囲気だけど、年を経るにつれ恐ろしい風貌になっていきます(笑